卒業生の山根さんを中心に、中性子回折と誘電率測定を組み合わせて新しい氷の多形を発見した論文が Nature Communications 誌に出版されました。今回の論文の結晶学的証拠を以って、この新しい氷の相に XIX というローマ数字が付番され、以降は氷XIXと呼ばれることになります。
氷XIXは、氷VIの2番目の水素部分秩序相であり、2018年ごろから存在が示唆されていましたが、決定的な証拠が得られず、論争が続いていました。山根さんの開発した高圧下その場誘電率測定装置を利用した実験により、氷VIを冷却したときの相転移境界に、下図に示すような折れ曲がりがあることが明らかになりました。また、その場中性子回折プロファイルに、既存の氷の相では説明がつかないピークが顕れ、氷XIXがこれまでに知られていなかった結晶構造を持つことを証明しました。これらの実験結果はたしかに氷XIXが存在することを示しており、3年に及ぶ論争を決着させました。
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Yamane R., Komatsu K., Gouchi J., Uwatoko Y., Machida S., Hattori T., Ito H. and Kagi H. (2021) Experimental evidence for the existence of a second partially-ordered phase of ice VI, Nat. Commun., 12, 1129. doi: 10.1038/s41467-021-21351-9