3月に学位を取得した山下恵史朗さん(現・海外学振PD、オーストリア インスブルック大学)を筆頭著者とする、ice VII の精密結晶構造解析の論文がPNASに出版されました。高圧その場中性子回折実験により、これまで知られていなかった特徴的な原子分布を明らかにしました。
粉末ならびに単結晶中性子回折データの最大エントロピー法による解析から、ice VII中の水分子中の水素原子は、下図に示されるような特徴的なリング状の分布をもつことが明らかになりました(A/Cは粉末回折から、B/Dは単結晶回折から求められた原子分布)。
このような局所構造を明らかにするためには、まず質の良い回折データを得ることが必要不可欠です。小松准教授が開発してきた粉末中性子回折用高圧プレス Mito system に加え、山下さんが開発した単結晶中性子回折用ダイヤモンドアンビルセルを用いることで、今回のような精緻な議論が可能になりました。
Yamashita K., Komatsu K., Klotz S., Fabelo O., Maria T. Fernández-Díazc M.T., Abe J., Machida S., Hattori T., Irifune T., Shinmei T., Sugiyama K., Kawamata T., and Kagi H. (2022) Atomic distribution and local structure in ice VII from in-situ neutron diffraction. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119, e2208171119. doi.org/10.1073/pnas.2208717119