2024年度まで本研究室に学振PDとして在籍していた高橋さんを筆頭とする、タングステンの溶存状態に関する論文がChemical Geology誌にて出版されました。
タングステンは、熱水鉱床の形成や沈み込み帯における元素移動に重要ですが、地球深部の高温・高圧流体中でどのような化学種として存在するかは十分に分かっていません。本研究では、最高約800℃・1.4 GPaの条件で、熱水ダイヤモンドアンビルセル(HDAC)を用いたその場ラマン分光測定と、密度汎関数理論(DFT)計算を組み合わせて、タングステンの溶存形態を調べました。その結果、高温流体中では複数のタングステン原子が結合した化学種ではなく、主に単核のタングステン酸水素イオン(HWO4-)などとして存在することが明らかになりました。特にHWO4-は、塩化ナトリウムを含む流体によるタングステンの移動を担う主要な化学種と考えられるため、鉱床形成や沈み込み帯深部での流体-岩石反応を理解する手がかりとなります。
Takahashi N., Nakamura M., Yamashita S., and Kagi H. (2026) Tungsten(VI) speciation in aqueous fluids at high pressures and high temperatures: in-situ Raman spectroscopy supported by DFT calculations. Chemical Geology, 713, 123411.